1. 絵本作家・いしかわこうじトップ > 
  2. エッセイ > 
  3. mi:teインタヴュー記事「年齢も国籍も関係なく楽しめる絵本をつくりたい」(前編)

絵本作家・いしかわ こうじ エッセイ

mi:teインタヴュー記事「年齢も国籍も関係なく楽しめる絵本をつくりたい」(前編)(2008/04)

時間をかけて楽しめる、それが絵本

 小さい頃の僕は、お絵描きや工作、折り紙などが大好きな子どもでした。特に「色」というものに人一倍関心がありましたね。それで、高校ぐらいから絵描きになりたいなと思っていて。大学卒業後、イラストレーターとして仕事を始めたんですが、実は絵本づくりは、その頃からずっとやりたいと思ってたんですよ。でも、イラストレーターとして第一線でやれるレベルになりたいっていうのが目標としてあったので、しばらくはイラストの仕事に夢中になっていました。

 ただ絵っていうのは、わりと瞬間的に楽しむものなんですよね。
1枚1枚ぱっぱっと見ていく感じで。だから音楽とか小説とかみたいに、もう少し時間をかけて楽しんでもらうには、どうしたらいいんだろうっていうのがずっと頭にあって。
それで、2000年頃に始めたのが「ペーパーわんこ」という立体の犬のシリーズです。工作絵本みたいな感じのものなんですけど、そのペーパーわんこの写真をおはなしみたいにまとめたものが、ボローニャ国際絵本原画展に入選したんですね。ボローニャでは絵本作家として活動している人との出会いもあったりして、その頃からまた絵本づくりを考えるようになりました。絵本なら、ゆっくり時間をかけて、しかも何度も楽しんでもらえますからね。

年齢も国籍も関係なく楽しめる絵本を作りたい

 『どうぶついろいろかくれんぼ』などの「かくれんぼ」かたぬき絵本シリーズは、鮮やかな色の中から形が現れる瞬間を体験できるような絵本を作りたい、というのが最初のコンセプトでした。結構アートっぽい実験的な絵本になりそうな気がしていたんですが、いろんな人の意見を聞きながら試行錯誤していくうちに、とてもポピュラーな絵本に仕上がったんです。

 かたぬきがパッと重なった瞬間にピタッと決まるときの気持ちよさって、年齢は関係ないと思うんですよ。プリンの型をプルンッて出したときの感覚と同じで、大人でも子どもでもただ単純に気持ちいい。おじいさんに見せても、おもしろいねって言ってくれるんです。今、11カ月になる娘がいるんですが、娘は穴に手を入れたりして遊んでますね。穴を使って自分でページをめくってみたり。そういうおもちゃみたいな要素もあります。言葉がわかる子ならクイズみたいにしてもおもしろいし、「ねこってcatっていうんだ」と英語の勉強にしても楽しいし。いろんな年齢の人が楽しめる絵本にしたつもりです。

 このシリーズはフランスや韓国でも出版されたんですが、形でパッとわかるから、どこの国の人でも楽しめるんですよね。文章だけじゃなくて、絵や色、形などで見せていく本っていうことで、年齢も国籍も関係ないというのが絵本の魅力だと思いますし、そういう絵本をつくっていきたいなと思っています。

ミーテはいろんな絵本との出会いの場

 実は僕もミーテの会員なんです。絵本作家としても、子育て中のお父さんとしても、いろいろ参考になることが多くて、楽しませてもらってます。

ちっちゃい子がいると、絵本の売り場に行くのも大変だったりするじゃないですか。ベビーカーだと狭くて入れなかったりとかね。それに、本屋さんに行ったとしても、平積みになっている絵本ならまだしも、棚に差してある本を1冊1冊手にとるのは大変。だから、気になる絵本があると、他の人がどういう風に読んだのか感想を読んで、それを参考に絵本を買うこともありますよ。たまに、表紙だけ見てネットで注文して、思ってたのとちょっと違ったなんてこともありますからね。

この人の好きな本なら気に入るかも……といった感じで、いろんな絵本と出会えるのもいいですよね。本屋や図書館で絵本を探すのとはまた一味違う出会いがある。それってとてもうれしいことですよね。

絵本作りについてはまだまだわからないことだらけで、1冊1冊、未知の世界を切り開いている感じですが、やりながら勉強して、人の意見も聞いて、いろんなジャンルに長く読まれる絵本を残していきたいというのが僕の夢です。ミーテ会員のみなさんも、いろんなジャンルの絵本を読んでみてくださいね。

<聞き手・菅谷志津>

m:iteサイト記事

絵本作家・いしかわこうじのエッセイトップに戻る